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「平成28年度 金融行政方針」公表
金融庁が平成28年10月21日に「平成28事務年度 金融行政方針」を公表しました。
「金融行政方針」とは簡単に言うと金融庁が金融機関に対して、『今事務年度はこういうことを銀行に求めてます!だからこういう形で実現に向けて尽力してくださいね!』といったことが記載されたものです。
※ちなみに金融庁の事務年度とは7月から翌年6月までを言い、金融機関の年度(4月から翌年3月まで)とは少しズレています。
金融庁はこの金融行政方針に基づいて検査・モニタリングを実施するので、銀行経営にとっては無視できません。
銀行もこの方針に合わせて舵取りをせざるを得なく、最終的には営業店の運営にも影響が及んできます。
今回はこの「金融行政方針」のポイントを簡単に説明していきます。
(1)検査・監督のあり方の見直し
従来は資産査定や法令順守確認を主としていた検査を行っていましたが、そのせいで金融機関が保守的・画一的な経営をしているとの見方から、金融機関が創意工夫して独創的な経営ができるような新しい検査・監督に変革すると書かれています。
(2)顧客本位の良質な金融商品・サービスの提供を競う環境の整備
みなさんの銀行も、10月あるいは11月から一部保険商品の保険手数料開示に踏み切っていると思います。
これは「銀行は顧客のことを考えず、高額手数料の商品ばっかり売っているのではないか!?」との金融庁の疑念から生じた流れです。
最近、キーワードとなっている「フィデューシャリー・デューティー」(金融機関等による顧客本位の業務運営)の確立を目指す動きが示されています。
(具体的取組み)
・金融商品・サービスに係る各種手数料等の開示を促進
・金融機関による顧客本位の取組みの自主的な開示を促進 など
(3)家計における長期・積立・分散投資の促進
金融庁としても家計の余剰資金を銀行に預金としてただ寝かせておくよりも、投資に回して経済の活性化に役立ててもらいたいとの考えがあり、その為に向けた方策が記載されています。
(具体的取組み)
・NISAの改善・普及
・投資初心者を主な対象とした実践的な投資教育 など
(4)「日本型金融排除」の実態把握
日本型金融排除とは、「十分な担保・保証のある先や高い信用力のある先以外に対する金融機関の取組みが十分でないため、企業価値の向上等が実現できていない状況」と定義されています。
要は「優良先以外にもちゃんと支援してるのかね?担保や保証がないと貸さないと銀行が言っているのではないかね?」といった調査を企業に対して直接行うということです。
(5)「金融仲介機能のベンチマーク」の活用
9月に金融庁から公表された「金融仲介機能のベンチマーク」を活用し、ガバナンスや業績評価、融資審査態勢等を含め、銀行と深度ある対話を実施すると書いてあります。
銀行もこのベンチマークの数値が良くなるように動かざるを得ないので、営業店でも運営方針に変更が生じる可能性が高く、影響度が高い項目であると言えます。
(6)IT技術への対応
FinTechへの対応やサイバーセキュリティの強化など、ITと金融の融合についても積極的に行う姿勢が記載されています。
かなり簡潔にまとめてしまいましたが、以上のようなことが「金融行政方針」に書かれており、前述した通り、銀行の経営方針にも絡んでくるため、時間がある場合は一読しておいて損はありません。
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